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高野寛

モデリングギターで、初めてそれを意識せずに弾くことができた

 

──はじめてこのギターを知ったときにはどう思いましたか。

高野 元々自分は宅録系の人間なんで、こういうのにすごく興味があるんですね。でも、この手のモデリング系のギターって、弾いたときのレスポンスがあまり良くないという経験があったのでどうなのかな、と漠然と思っていて。

──実際に弾いてみていかがでしたか。

高野 特にエレキ系のプリセットの弾き心地は、普通のギターとほぼ変わらないですね。ピッキングに着いてくるし、ネックもすごく握りやすいです。実用的なエレキに、12弦とかアコギとかシタールとか、いろんな音色がオプションで付いているお得な感じです(笑)。

──普段のメインギターと比べて、違いはありますか。

高野 今はテレキャスとかストラト、335がメインですが、335とは違うレスポールのリアの、独特な音色のニュアンスを感じます。特に歪ませたときの、厚みのあるレスポールのサウンドがうまく出ていると思いますね。

 

良いサウンドは「記号」、要はそれをどれだけすぐに出せるか

高野 センターピックアップがないのに、ストラトのあの独特のセンターピックアップとのハーフトーンのサウンドが出せちゃうというのもすごいですね。

──2つのコイルの音を拾って、フィルターをかけてあのサウンドになっています。

高野 ハーフトーンでも3種類の音があって、それぞれ良い雰囲気というか、いろいろな場面で使えるバリエーションがあっていいですよね。同じハーフトーンでも、年代とかボディとかいろいろな要素で音は変わってくるんですが、それを越えて「ハーフトーンらしい音」が出せますね。

──いろいろな「良いサウンド」をシミュレートして搭載しています。

高野 例えば「ストラトのハーフトーン」とか「レスポールのリア」みたいな代表的なサウンドって1つの「記号」だと思うんですよ。この曲にはこのサウンドがはまる、とイメージした時、その音をすぐ出せるかどうかで、インスピレーションとかモチベーションが変わってくるので、すごく大切だと思います。このギターは、代表的なギターのサウンドをプリセットとしてうまく再現しているので、いろいろ試しやすいですね。

──高野さんがよく使うモデリングはどれでしょう?

高野 定番ですけど、ストラトのシミュレーションの「SINGLE」とレスポールの「’BUCKER」がメインですね。あと、シングル+シングル+ハンバッカーという配列の「Modern」とか。デモテープとか作っていて「あ、ここで別のギターほしいな」というときに、いろいろなモデリングを試してみる、という感じですね。いちいち持ち替えずに済むのは助かります。

──やはり、持ち替えるの面倒ですよね。

高野 それから、エフェクターってギターの出力によってかかり方が違うじゃないですか。たとえばシングルとハンバッカーで歪み方が違うので、エフェクトのセッティングを確認するときに、シングルだとこれくらい歪んで、ハンバッカーだとこれくらい歪む、というチェックがスイッチ1つで切り替えられるのも、役に立ちます。

 

シビアな練習、そして作曲グッズとして

 

高野 あとね、僕はこのギターをよく基礎練習に使ってるんですよ。

──練習・・・!?

高野 ヘッドホンアウトが付いているから、いちいちアンプを使わないで気軽に音が出せて、思い立ったらすぐに練習を始められるんで重宝してるんです。しかも、ノーエフェクトで。なぜかと言うと、何もごまかせないから、ピッキングのタッチがシビアに出るのを逆手にとって、あえてこれを使っているんです。

──なるほど、さすがプロはそういう使い方もするんですね。

高野 あと、ギターにインスパイアされて曲ができることってあるんですよ。たとえば、12弦の「12STRING」をセレクトして、弾いているうちになんかその雰囲気に引っ張られてどんどんインスピレーションが湧いてくるとか。シタールの音色で弾いているときに、いつもと違うリフが出来るとかね。これ一本で、音色に感化されてイメージが湧きますね。

──「作曲ツール」としても活用されているということですね。他に気に入っているところはありますか。

高野 そうそう、アームね。アコギとかシタールのサウンドでアームってなかなかないですけど、そういう「現実では手に入りにくいもの」を再現できるのも良いですよね。けっこうアームが気に入っていて多用するので、チューニングを安定させるために、自分でロック式のチューニングペグに交換しちゃいました(笑)

──そこまで気に入ってもらって嬉しいです!ところで、「USER」には好みのサウンドを保存しておいていつでも呼び出せるようになっていますが、高野さんはどんなサウンドを入れていますか。

高野 レスポールのフロントとリアのミックスと、SSHのハンバッカーですね。レスポールのリアとSSHのリアでは同じハンバッカーでもカラーがけっこう違っていて、リア単体として使うときにはSSHのハンバッカーの方が好みなんです。あとは、鉄弦、ガット、12弦を並べて置いたりしてます。

 

ステージで、そしてアンサンブルで

──今後、ステージとかで使う予定はありますか?

高野 高橋幸宏さんや原田知世さんとのバンド「pupa(ピューパ)」のライブではエレキシタールを使う曲もあるので、今後そういう場面で活用するかもしれないですね。内蔵のディストーションとかリバーブの設定だけではなく、トーンの状態も保存できてすぐに好みの音が出るので、ステージでのセッティングも楽になると思います。

──このギターに興味がある人へ一言お願いします

高野 「モデリング」というと「似ている/似ていない」という部分が基準になりがちなんですけど、このギターは、単体で音が似ているということだけではなくて、レスポンスがよくて、ギターアンプで鳴らした時、そしてアンサンブルの中で鳴らした時に使いやすい音色だなと感じます。特にエレキは、バンドとかアンサンブルの中で弾くことが多い楽器だから、そういう実用性は大事だなと思います。ぜひアンプにつないで、アンサンブルの中で試して欲しいですね。