1980年に『ジェニーはご機嫌ななめ』でデビュー、その後も数々のヒット曲を送り出し大きく成功を収めたロックバンド、ジューシィ・フルーツ。1984年に解散するも2013年に再結成し、現在も精力的に活動をされています。
そのジューシィ・フルーツでボーカルとリード・ギターを担当するイリアさん。長年VOXのエフェクターを使用していただいております。そして昨年12月のクリスマス・ライブにてVOXギターMark III miniを弾いていただきました。
今回はイリアさんにご自身のことやバンドのこと、VOXのエフェクター、Mark III miniについてお話を聞かせていただくことができました。またジューシィ・フルーツのメンバーであるTAKAさんにも同席して頂きお話しを伺いました。
──楽器(ギター)を始められたきっかけは?また、そのころによく聴いていたのはどんな音楽でしたか?
イリア(以下I) 初めはピアノを習っていたのですが、あまり熱心にやる子ではありませんでした。中学生になって吉田拓郎さんなどのフォーク・ソングが流行り始めて学校にフォーク・ギターを持ってくる男子生徒がわっと増えました。フォーク・ソングにハマりはしなかったのですが、ギターをすごく欲しいと思いました。弦の良さ・・弦の響きがすごく好きになったのです。それでギターが欲しいと親に話したら、何処かから・・貰い受けたのか、買ったのかはわからないのですが・・・クラシックギターが私のところに来ました。その頃は洋楽をいろいろ聴き始めていて、その中でもハマったのがプログレッシブ・ロックでした・・・、最初にコピーしたのがELPでしたね。
──クラシックギターでですか?
I はい、クラシックギターで「展覧会の絵」というアルバムの「賢人 (The Sage)」という曲を・・どちらかというとアコギっぽい曲だったと思います。
中学生、高校生時代はプログレッシブ・ロックをひたすらコピーしていました。それで、ある日バンドをやっている男子の同級生たちが家に来て、一緒にバンドをやろうと誘われたのです。それをきっかけにバンドをやり始めました、それが高校一年のときです。そこからエレキ・ギターに触れるようになって。それまではピックも持ったことはありませんでしたが。そこから色々な曲を演奏するようになりました。
──ご自分で聴かれていたのは全てプログレッシブ・ロックだったのですか?
I それが中心でしたが、イーグルスやドゥービーブラザースなどのいわゆるウエストコーストも聴いていました。でも初めにやったバンドがプログレバンドだったのでELP、YES・・・ピンクフロイドとかもやったかな・・あとキングクリムゾンもやっていましたね。そういうバンドでした(笑)。
──そうでしたか・・それは意外ですね。現在では多くの女性ギタリストがいますが、個人的にはイリアさんが女性ギタリストの先駆けと思っています。当時、ご自分ではどのようなお気持ちでしたか?
I そうですね、ただ男性と女性とか、そういう意識は全くありませんでしたね。確かに最初にやったバンドやその周りは男子ばかりでしたから。なので親に「バンドをやっちゃダメ」と反対されるのではないかと、ちょっとびくびくしていました。高校一年生だし、他にそういう女子はいませんでしたから・・。でも親はわりとすんなり認めてくれてバンドをやることができました。家で一人コピーしている姿を見ていたからかもしれません。
I そのプログレッシブ・ロックのバンドは、高一が終わった春休みにアマチュア・コンサートをやって終わりました。その後は女の子だけでバンドをやりたいという人に誘われて女性だけのアマチュア・バンドをやり始めました。そうすると、やはり女性だけだと注目されるのですね。あぁそうなんだぁって気がつきました。でも女性同士でないとダメということはなかったです。ただギターを弾いていたいと・・・好きなことをやっているというだけでしたから・・。
そしてレコード会社さんからお声をかけていただき「ガールズ」というバンドでレコードデビューすることになりました。
──ボーカルとギターをやられたのですか?
I いえ、ギターだけでした。ランナウェイズ(アメリカのカールズ・バンド)が出てきた頃と同時期だったので、わりと派手な衣装で・・・、私は後ろで地味にギターを弾いておりましたが(苦笑)。当時ガールズ・バンドは珍しがられましたが、今と時代が違ってバンドが出演するような音楽番組もありませんでした。初めて出演させていただいたのは夜の11時から始まる大人向けの番組です。
──当時エレキといえば、学校で禁止になっていたり、今とはかなり違っていましたよね・・。
I はい、その番組に出演したら、他のメンバーが高校から呼び出されて「バンドをとりますか?それとも学校をとりますか?」と・・・・。私は他のメンバーより年齢が上で・・・すでに大学生だったので問題はなかったのですが。
結局メンバー4人のうち3人がやめてしまいました。そして新たに一人だけ入れてバンドを続けました。私は、ただ好きでギターを弾いていただけなのですけどね・・・早い時期だったのでいろいろ大変なことはありましたね。
──でもそういうところを乗り越えてやられてきたということですね。
I とにかく周りを気にすることよりも、何か好きなことがやりたいという思いが強かったですね。
──そうでしたか、ただギターを弾いていたかったと・・・かっこいいですね。では、話を変えて使っておられたギターや現在お使いのVOXのエフェクターについてお伺いしたいのですが。
I アマチュア時代は、ヘッドに何も書いていない怪しげなギターを使っていました(笑)形はレスポールぽかったです。プロになってからは、とあるメーカーさんのギターを使わせてもらっていたのですが、しばらくして本物のレスポールを買いました。楽器屋さんに行って店員さんに勧められるままに買ってしまったのです(笑)
──でも、当時ふらっと楽器店に行って買える金額ではないですよね?
I あまり派手にお金を使うことはなくて、お年玉や貯金などで購入できるくらいの金額は持っていたのですね。このレスポールはしばらく使っていましたね。
──エフェクターとかはどうでしたか?
I ジューシィ・フルーツの頃はコンパクト・エフェクターでしたね。オーバードライブとか・・。でも全然使いこなせてなくて・・・足でオン/オフできなかったのです。それなのでオーバードライブはオンのままで、レスポールのピックアップごとにボリュームノブをリアピックアップはバッキン用に、フロントピックアップはソロ用に設定してピックアップセレクターで切り替えて音色をコントロールしていました(笑)
──すごいですね、それは思いつきませんでした、目から鱗です。
I そうですか、当時はそれしか思い浮かばなかったのです・・(笑)初めの頃はそういう感じでしたが、徐々に足でコントロールできるようになりました。
──VOXエフェクターを使用していただくきっかけはなんだったのでしょうか?
I ジューシィ・フルーツが解散時点で使っていたコンパクト・エフェクターをすべて手放してしまったのですね。再結成にあたってエフェクターをどうしようかとなり・・・。それで事務所の楽器担当の人に相談したら、VOXのこれがいいとアドバイスをいただき、それ以来使わせていただいております。もう10年くらいになりますかね。
──それはありがとうございます。そのエフェクター(ToneLab LE)のお気に入られているところはどのようなところですか?
I 私、すごく機械音痴なのですね。それでも取扱説明書を読んだり、楽器担当の人に教えてもらったりして使い方を覚えました。慣れるとすごく使いやすいということがわかりました、機械音痴の私でも・・・。プリセットで気に入ったものを選んで、パラメーターをいじって自分の好みの音にして・・・ですね。ずっと使わせていただいております。もう私、これがないと生きていけないです(笑)
──今回ライブで使用していただいたVOX Mark III miniはどうでしたか?
I まぁとにかく可愛い!ライブを見に来ていただいた方から「すごく可愛い」と。女子にも人気があった感じでした。コンパクトで軽いし、扱いやすかったですね。この色(マーブル)が衣装とすごくマッチしていてよかったです!
──普通のギターよりも短いので、弾くのが難しいかなとも思ったのですが・・・。
I いいえ、コードを弾く分にはポジションを移動できるので問題ないかなと思います。リード・ギターでソロをとるときに音域が足りなくなることがあるかもしれないなとも思いますが、この間のライブの中でこのギターでジューシィの曲を1曲弾かせてもらいましたが、その曲では高い音域もありましたけど大丈夫でしたね、バッキングの方も全く問題なかったです。
──そうでしたか、ありがとうございます。それでは近況や今後の活動内容を聞かせて頂けますか
I 今日は「いりやまさんちの金曜日」というZoomオンラインファンミーティングをTAKAさんと一緒にやります。月に1度のペースでやっております。
ジューシィ・フルーツのライブは去年の12月24日にクリスマス・ライブをやり、その後はまだ決まっておりません。ベースのジェフさんが3月に武道館でザ・コレクターズ(ジェフさんはザ・コレクターズのメンバーでもあります)なので、忙しいと思うので、こちらはその間に充電をしようかと・・。いろいろやりたいこともあります・・デモ・テープを作ろうかなぁ・・・とか。
──あと、個人的にやられていることなどはありますか
I 私、クラシックの合唱をやっておりまして、3月26日に第八回定期演奏会があります。合唱をやっているとハモりの捉え方が良くなるような気がしますね。
あと音楽ではないのですが、お絵かきをやっておりまして・・・今年の夏に展覧会をやろうかと、具体的に動き始めております。(イリアさんは美大出身です)
──どのような絵を描かれているのでしょうか
I 色鉛筆画です。小さいお子さんに教えることは続けていたのですが、自分では描いておりませんでした。でも、このコロナ渦で家にいる時間が長くなったせいか、急に思い立って描くようになりました。
──音楽活動をやられていなかった期間にはギターは弾いておられたのですか?
I いえ、まったく弾いていませんでした。もう弾くことはないなと思い仕まい込んでいました。
それで偶々知り合いのライブに行ったときに「弾いてよぉ!」て言われて・・・「えぇぇ〜」となりましたが、なぜかそつなく弾けましてね。それからしばらくして弾いてみたら、やっぱり自転車じゃないですねど覚えているのですね「弾ける、弾けるんだなぁと・・」あとブランクがあった所為なのか新鮮さが増したというか・・すごく楽しく再開しました、はい。もし弾き続けていたら、すごぉ〜く上手くなっていたかもですね(笑)
──本日は楽しいお話をたくさん聞かせていただきました。イリアさん、ありがとうございました。これからのご活躍も楽しみにしております。それでは、ここからはTAKAさんにも少しお話を聞かせて頂きたいと思います、TAKAさんはVOX好きともうかがっております、よろしくお願いします。
──デビューしたときはベースを弾いておられたとのことですが?
TAKA(以下 T) 二十歳の時にロックバンド(ジューシィ・フルーツではなく)でデビューしたのですが、その時はベースを演奏していました。でも個人的には、それまでずっとギターが好きで弾いていたのです。それなのでベースも弾けるよという感じですね。
──楽器を始められたきっかけは?また、そのころによく聴いていた音楽は?
T 楽器をやったきっかけは、ストーリーの前半はイリアさんとほぼほぼ同じですね。僕も鍵盤をやっていて、やはりいい生徒ではなかったです(笑)フォーク・ソングが流行りましたが、その後の小学校5〜6年生の頃ですかね・・75年とか・・・その頃にちょうど洋楽でベイ・シティ・ローラーズ(イギリスのポップ・ロック・バンド)とかが「ぶぁー」と入ってきて女の子はワーキャー言っているし・・・。こちらもまずはギターの弾く真似から始まり・・ギター弾きたいなーなんて・・それで親に相談したら、どこかからアコースティックギターが来て・・・。「でもこれじゃないんだよ・・こんな穴は空いてないんだとよ・・・」と駄々をこねていましたね。それで僕には兄がいるのですが、その兄が持っているエレキギターを譲ってもらいました。それがエレキ・ギターの入り口ですね。
ただ兄は左利きで、ギターも左利き用なのです。僕も左利きなのですが、そのギターをひっくり返して(右利き用として)弾いていました、逆ジミヘンみたいに(笑)。
──聴かれていたのは、やはり洋楽のほうが多かったのですか?
T 中学の頃はツイストとかサザンオールスターズとかの邦楽が流行っていて、そういう曲とKISSとかの洋楽を聴いてバンドでやっていましたね。
──そうでしたか。それでは機材などについてお伺いしたいと思います。MINI SUPERBEETLEを使っていただいていますが、VOXサウンドの魅力はなんですか
T VOXアンプについてですが、僕が個人的にいいなと思っているのはミドル(コントロール)がないことですね。ミドルがついていると、あれを下手に動かすことで音がショボくなったり、抜けなくなったり、僕にとって難しいポイントなのですね。トレブルとベースだけで十分で自分の楽器の音をソリッドで一番いい音で鳴らしてくれているように感じます。
フェンダーのクリーンな感じのトーンももちろんいいのですが、ちょっと余計な低音の突き上げがあって、僕の趣向する音楽のギターのサウンドではないのですね。VOXにはそういうところがなくて、今そこで鳴っているギターの音をそのままバシッと出しくれる。しかも突き抜けてくる高音域があるじゃないですか。なんかコントロールされていないような・・・・その破壊的なガシャーンという感じがとても魅力ですね。
──一番初めに使われたVOX製品ってなんだったのですか
T VOX AC30です。それがですね・・・色々な人のツテがあり・・・もらったのです。ある日、VOX AC30をもっているから使ってみて・・と言う人が現れて・・使ってみたら、めちゃくちゃいいのですよ・・これが。昔は周りにVOXのアンプ自体なかったですよね・・試したくても。たまたまそういうことで手に入れることができました。
──VOX製品に関して思い出とかありますか?
T ずっとVOXのアンプを使っていたので・・思い出というか・・思い入れがすごくありますね。60年代にビートルズなどのブリティッシュのグループが使っていて、なんかそれと同じイメージの音で鳴ってくれているというか・・・・僕はリッケンバッカーのギターをメインで使っているのですが、そのギターとVOXのアンプを合わせて使ってから思うことなのですけど、やっぱりすごく・・このギターの弦の巻いている感じとかサウンド・・なにかソリッドな音がいいというか、この音が出したかったんだよ・・という気になります。
多分、現代の音楽とかジューシィ・フルーツにそこを追求してしまうと違うものになってしまうので、そのへんはうまくバランスをとって音作りをしています。
──ジューシィ・フルーツさんには3人のギタリストがおりますが、アレンジなどのときに注意していることや意識されていることなどはありますか?
T 基本はイリアさんとアキシロさんでスタンダードなギター・パートを演奏するアレンジで進めてもらっています。僕はどちらかというとその合間をぬった演奏・・極端にいったらシンセ的な役割やオーバーダブ的なギターの役割というか、そういうところを意識して音作りやポジション取りをしています。結構便利屋的なパートなのです。あとはJEFFさんがいないときにはベースを弾きます。
I もともとはそういうことがきっかけでTAKAさんにはジューシィに参加してもらうようになりました。
──最後に楽器や機材に対する要望などはありますか?
T サウンドに関して求めていることは、ギターの音をそのまま増幅してくれるものが好きですね、倍音も含めて・・・。それを通してしまうと極端に音が変わってしまうような機材は、どうなのかなと思っています。そうじゃないものを選んで使っていきたいと思っています。色づけがされてしまうと僕のものではないなと・・・・。
──本日は楽しいお話をたくさん聞かせていただきました、イリアさん、TAKAさんありがとうございました。
ジューシィ・フルーツ(Juicy Fruits)
1980年「ジェニーはご機嫌ななめ」でセンセーショナルなデビューを果たした伝説のロックバンド。その後も数々のヒット曲を送りだし1984年に解散するが、2013年7月、約30年ぶりに再結成。現在のメンバーは、イリア(Vocal & Guitar)、アキシロ(Guitar & Chorus)、ジェフ(Bass & Chorus)、高木利夫(トシ Drums & Chorus)、TAKA (高梨ケンヤ Bass, Guitar & Chorus)の5名。最近では、2021年12月24日のGemini Theaterでクリスマス・ライブを行うなど勢力的に活動中。
「ジューシィ・フルーツ」WEBサイト: Juicy Fruits WEB
34年ぶりにリリースされたアルバム「BITTERSWEET」