1960年代の実機を分析、研究。その成果を集大成したAC-HWRが登場
ヴィンテージの楽器が高価で取引されているのは、その希少性はもちろんですが、ヴィンテージ特有のサウンドも大きな要因になります。60年代からほとんど同じ回路で作り続けられているAC30ですが、ヴィンテージの実機は筆舌し難く芳醇で音楽的であると言われます。
今回はそのサウンドの秘密を紐解き、現代に入手できるようにしたいとVOXは考えました。
徹底したリサーチに基づくヴィンテージ・サウンドの再現をお届けするAC-HWRシリーズのバリエーションは、30Wコンボ・タイプと15Wコンボ・タイプにCelestion製Alnico Blueスピーカを搭載したAC30HWR2XとAC15HWR1X、Celestion製G12M Green Backを搭載したAC30HWR2とAC15HWR1、ヘッド・アンプのAC30HWRH、Celestion製Alnico Blueを搭載したスピーカ・キャビネットV212HWRX、そして小出力のコンボ・アンプAC10HWR1、AC4HWR1。さまざまなシーンにマッチする幅広いラインナップを用意しました。
1.ヴィンテージ・サウンドへの肉薄
1.1 電源回路の見直し
基本仕様上は同じであっても、現在のものとヴィンテージ・アンプの電源の動的特性は大きく異なっています。現在の電源回路は安定して動作するために電圧変動の少ないように設計され、それが電源としては良いものとなっています。一方、ヴィンテージ・アンプの電源は大きなスピーカの動作に対して呼応するように変動する特徴があります。これによってヴィンテージ・アンプ特有の「コンプ感」、「サグ感」が生まれていました。今回ヴィンテージのAC30の電源回路を測定し、この特性に迫った電源を新たに設計しました。これによってギタリストにとって気持ちのいい、浸ることのできる弾き心地を生み出しました。
しかしながら、ただ単にVintageの特性を真似ると、特に大音量時に「ゴーストノート」という弾いた実音とは無関係な音程感のある異音が出力されることがあります。サウンドを優先させるか?ゴーストノート対策を優先するか?という中で、かつてAC30CC2では電源の平滑回路を切り替えるスイッチを搭載していました。今回の新設計の電源回路はサウンドとレスポンスを犠牲にすることなくゴーストノートの対策も施されています。
1.2 出力トランス
出力トランスもヴィンテージ・サウンドを構成する大きな要素です。仕様上同じであっても出てくる音は異なってしまいます。ヴィンテージ・アンプの心地よい倍音成分の要因の一つです。これはトランス部分での飽和歪みによるものですが、こちらはトランス=変圧器のスペックでは測れないところがあるため、試作を何度も繰り返し、ヴィンテージのサウンドになるように調整をしたカスタムトランスを採用することになりました。
1.3 キャビネット
キャビネットに使用する板材の厚さも見直しました。ヴィンテージACシリーズのキャビネットは少し薄い板材を使っており、それによってミッドレンジがふくよかかつ広がりのあるものとなっていたのです。今回のキャビネットはヴィンテージ・アンプと同じ板の厚さとし、より迫ったサウンドを実現させます。
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2.実用的な機能について
60年代当時の仕様をそのまま受け継いだアンプは分かりやすいイメージではありますが、今回はシンプルさをできるだけ維持しながら実戦で使いやすい機能を持った製品とし、今のギタリストに使いやすい機能を搭載することにしました。
2.1 スプリングリバーブ
ヴィンテージアンプのサウンドはやはり「浸れるサウンド」です。これに加えてギターアンプで何があれば「浸れるサウンド」となるか?というところで考えたのがスプリングリバーブです。ギターサウンドの多くにリバーブが使われています。スプリングリバーブユニットはこの全真空管アンプとの相性に優れたデバイスとして採用しました。
2.2 FXループ
ご存知のように現代は自分のサウンドを作るにあたって多くのエフェクトを組み合わせていることが60年代に比べてかなりポピュラーになっています。そこで問題になるのが歪んだアンプと空間系、モジュレーション系、ピッチシフト系のエフェクトとの組み合わせです。これらの効果を歪ませてしまうと、どうしても澱んだサウンドになってしまいます。これを解決すべくFXループを搭載し、エフェクトの効果を綺麗に出力できるようにしました。
2.3スピーカーアウト
ちょっとしたことですが、比較的大きな音の出るモデルAC30、AC15の内蔵スピーカーをプラグ付きの接続ケーブルとし、簡単に外せるようにしました。これによって小音量を求められるところでアッテネーターを容易に接続する事ができます。